最近、退職の相談もなく、普段通りに出勤していた社員が、
ある日突然、引継ぎもなく辞めてしまった──
そんな経験はありませんか?
今年になって耳にすることが増えた「リベンジ退職」は、ただ辞めるだけではなく、
退職時にあえて会社に迷惑がかかる形で去る行動を指します。
パソコンのパスワードを残さない、必要なデータを整理せずに退社する、引継ぎを拒否する……。
外から見ると「急に怒り出した」「突然辞めた」ように見えますが、その裏側では、
時間をかけて積み重なった不満や失望が静かに膨らんでいることがほとんどです。
今回は、この「リベンジ退職」をテーマに、
“爆発”に至るまでの見えにくいサインと、
企業が日頃からできる予防策について掘り下げていこうと思います。
目次
第1章|リベンジ退職は「突然の爆発」ではなく、“積み重なった不満の最終形”
「リベンジ退職」という言葉を耳にする機会が増えました。退職時に、あえて会社が困るような形をとる退職のことを指します。
- 引継ぎを一切しない
- パソコンのパスワードを残さない
- 必要データを整理せず放置する
- チームに混乱を残したまま退社する
こうした行為が意図的に含まれるのが特徴です。
結論から言えば、リベンジ退職は突然生まれるものではありません。
外から見ると「急に怒った」「急に辞めた」に見えても、本人の中では時間をかけて不満や失望が積み重なった結果です。
つまり、
爆発は突然でも、心はずっと前から少しずつ限界に向かっていた。
ここを理解できるかどうかで、組織の対応は大きく変わります。
そういえば……思い当たることはありませんか?
第2章|リベンジ退職の裏側にある“3つの積み重なり”
リベンジ退職にも必ず理由があります。たとえ行動が過激に見えたとしても、その根底には蓄積された感情が存在します。
ここでは、よくある3つのパターンを紹介します。
1. 「自分だけ」損してる、不公平!という積み重ね
- 真面目にやっても報われない
- 不公平に扱われたと感じている
- 自分だけ負担が重い
- 頑張っても気づいてもらえない
この状態が長く続くと、
「もう知らない」「最後くらいは自分のために動く」
という心理に向かいます。
仕返しの行為は”怒り”というより、
“積み重なった理不尽への反応”として表れるのです。
2. 上司や会社の“小さな裏切り”が続いた
本人が「裏切られた」と感じる経験は、大きなトリガーになることがあります。
- 約束した体制改善が行われない
- ミスの責任が一方的に押し付けられる
- 不透明な人事
こうした“小さな傷つき体験”がじわじわ効き、最後には
「こんな会社に引継ぎなんて必要ない」と思ってしまうのかもしれません。
3. 相談できる場所がなく、選択肢が“辞めるしかない”になった
リベンジ退職の多くは、本当はもっと前に助けられたはずのケースです。
- 話を聞いてもらえない
- 面談が形骸化している
- 管理職が忙しすぎて会話がない
- チームの雰囲気が悪い
コミュニケーション不全は本人を“孤立”させます。相談できないまま不満が溜まると、
「辞める時くらい、わたしの気持ちを知ってほしい」
という想いが行動につながります。
第3章|リベンジ退職の前には必ず“違和感サイン”が出ている
会社側から見ると突然でも、本人の中には必ず前兆があります。ほんの小さな変化かもしれませんが、
何かしらの信号を発している場合があります。
よくある前兆サイン
- 仕事のやり方が急にドライになる
- 雑談やコミュニケーションが減る
- 引継ぎに関する話題を避ける
- PCの整頓・メールの整理をあえてしない
- 「あとでやります」を繰り返す
- 急に有給を計画的に消化し始める
- 周囲との距離が広がる
辞めてしまった後に、
「そういえば思い当たる態度だったな…」
と思うこと、きっとあるのではないでしょうか。
第4章|企業が今すぐできる“リベンジ退職の予防策”3つ
対策は決して難しくありません。大事なのは、“仕組みより関係性”を整えることです。
1. 心理的安全性をつくり、“相談できる場”を日常にする
リベンジ退職の背景には、
「言えなかった」「言ってもどうせ変わらない」
という気持ちがあります。
だからまずは、困ったときに話せる安心感を職場につくることが大事です。
- 定期的な1on1で近況や負担を聞く
- 小さな違和感も話しやすい空気をつくる
- エンゲージメント調査などで変化に気づく仕組み
- 相談窓口を形だけにしない
私は「外部相談」として定期的に社員さんと話す機会がありますが、みなさん本当にたくさん話されます。すぐ解決しない内容でも、
「話せただけでよかったです」と言われることが多く、“話せる場”の力を強く感じます。
2. 日常のコミュニケーションを丁寧にし、ちょっとした声かけを増やす
怒りが爆発する背景には、
「わかってほしかった」「気づいてほしかった」
という気持ちがあります。
特別な承認でなくて大丈夫。大事なのは、日々の“ほんのひとこと”です。
- 「おはよう、今日寒いね」
- 「昨日の対応、すごく助かったよ」
- 「最近どう?無理してない?」
こうした声かけがあるだけで、“ここで働く自分”に安心感が生まれます。小さな承認や気遣いが増えるほど、
「自分は見てもらえている」という実感が生まれ、不満が溜まりにくくなります。
関係性を温めるのは、特別な施策ではなく、
日々のコミュニケーションの質です。
3. 役割・評価・期待を“見える化”し、不公平感を減らす
リベンジ退職に大きく影響するのが、「なんとなく不公平」という感覚です。
この“なんとなく”が曲者で、説明がないまま放置されると、
「自分だけ損している」「頑張っても意味がない」
と感じやすくなります。
だからこそ、“見える化”が効果的です。
- なぜこの配置なのか
- どんな役割を期待しているのか
- 評価の基準は何か
- 会社が大事にしている価値観は何か
これらを丁寧に伝えることも、仕事への納得感を大きく変わります。説明してくれる会社は、
不満が“怒り”に変わりにくいものです。透明性は、リベンジ退職を防ぐ大きなポイントと言えます。
ただし、会社都合だけを押しつけるのではなく、相手への思いやりが重要です
第5章|まとめ:リベンジ退職は“防げる”。気づきと関わりが職場を変えていく
リベンジ退職は、突然起きるものではありません。その裏側には、誰にも気づかれなかった不満や、
言いたくても言えなかった想いが積み重なっています。
ただし、ここまで見てきたように、リベンジ退職は決して「防げない問題」ではありません。
- 話せる場があること
- ちょっとした声かけがあること
- 役割や評価がきちんと伝わっていること
こうした日常の小さな積み重ねが、不満の芽を早い段階で見つけ、こじれを防いでくれます。
組織は、仕組みだけで動くものではなく、一人ひとりの気持ちがつくる関係性で成り立っています。
だからこそ、
「話してもいいよ」
「あなたを気にかけているよ」
という姿勢があることで、職場の空気は驚くほど変わります。
リベンジ退職は、会社への“攻撃”というより、その人が抱えてきた最後のSOSかもしれません。
気づけたとき、寄り添えたとき、職場はもっと安心できる場になります。そしてそれは、社員の定着や組織の安定にもつながるのではないでしょうか。
人が気持ちよく働ける環境は、どんな会社でも必ずつくれる。
その最初の一歩は、特別な仕組みではなく、
“今日の声かけひとつ”かもしれません。

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