「静かな退職」にどう向き合っていく?

最近、仕事には来ているけれど、何となく前ほど熱量を感じない──そんな社員の変化を感じたことはありませんか?

今、注目されている「静かな退職(Quiet Quitting)」とは、仕事を辞めるわけではなく、必要以上の努力や職場への感情的な関わりを手放す考え方です。
昇進や高評価を追わず、最低限の業務を淡々とこなす姿は、在籍していても“心はもうここにない”状態。

今回は、この「静かな退職」をテーマに、見えにくい“離脱”とその向き合い方を考えていきます。

結論:「辞めないからOK」ではなく、「活かせていないことがもったいない」

「静かな退職」は、賛否両論。
やるべき仕事をしてくれればいい。余計な主張や摩擦を起こさず、粛々と働いてくれる──そう考える企業もあるようです。
確かに、文句ばかりで業務に支障をきたす社員よりは、静かに与えられたことをこなす方が“扱いやすい”と思う気持ちも理解できます。

ですが、私はそれを「もったいない」と感じます。
本来、どの社員も何かしらの強みや可能性を持っているはず。
静かに職場から心が離れていくのを「仕方ない」と片づけてしまうのではなく、もう一度その人の可能性を信じて、関わり直すことが、これからの組織に求められると考えています。

「静かな退職」とは?──在籍しながら、職場への関わりを手放すという選択

「静かな退職」とは、辞表を出すわけではありません。
職場に通い、与えられた業務はこなす。でもそれ以上の努力や、成長・評価・昇進への欲求を持たず、淡々と働くだけの状態です。

自分から関わりに行くことをやめ、感情のエネルギーを投じなくなっているとも言えます。
これは“楽をしている”のではなく、関わっても報われない・伝わらない・理解されないという経験の積み重ねが背景にあることも少なくありません。

業務に支障がないため、周囲も本人も問題として扱わない。
でもその静かな空気の奥では、信頼や意欲の火が、ゆっくりと消えているのです。

なぜ起きるのか──“静かな退職”の背景にある3つの要素

静かな退職は、個人の性格や、やる気の問題ではありません。
多くの場合、職場との関係性や体験に起因する「静かなあきらめ」が原因です。

  • 1. 評価と努力のズレ
    がんばっても正しく評価されない、期待されていた基準が不明確──。そんな体験が繰り返されると、人は「もうがんばらなくていいか」と感じるようになります。
  • 2. 上司との関係性の希薄さ
    日々の声かけや関心が薄く、「自分のことなんてどうでもいいんだろう」と感じると、心は静かに引いていきます。「どうせ言っても聞いてもらえない」と、関わる意欲をそいでいくのです。
  • 3. 働く意味が感じられない
    「この仕事、自分にとってどんな意味があるのか」が見えないと、気力が低下していきます。特に若手世代は“納得感”を重視するため、目的が見えない仕事には距離を置こうとします。

気づけていますか?──静かな退職のサイン

静かな退職は、外からは気づきにくいかもしれません。
表面的なトラブルはなく、業務もこなしている。だから問題視されにくいのです。

次のようなサイン、、、、出ていませんか?。

  • 以前より発言が減った
  • 会議で意見を求めても反応が薄い
  • 「指示があればやります」という受け身の姿勢
  • 成長の機会やチャレンジを避ける傾向
  • 雑談やコミュニケーションの輪に入らなくなった

こうした変化を“静かにフェードアウトしている状態”と捉える視点が、管理職や経営者には求められます。
本人が声を上げることはありません。だからこそ、こちらが気づき、関われる関係性が必要なのです。

対話と信頼が「心の関わり」を取り戻すカギ

静かな退職を防ぐ、あるいは回復させるために必要なのは、制度ではなく「関係性の再構築」です。
もっと言えば、“職場にいる意味”をもう一度感じてもらうことです。

  • 「最近どう?」と何気なく声をかける
  • 小さな貢献を見逃さずに感謝を伝える
  • 評価の軸や目標をすり合わせ、「何を期待しているか」を共有する
  • 未来についての会話を増やす(キャリア、スキル、やりたいこと)

こうした小さなコミュニケーションの積み重ねが、あきらめや無関心をほどき、「もう一度、ここで関わってもいいかな」という気持ちを取り戻すきっかけになります。

“辞めない社員”をどう活かすか──関わりたくなる職場づくりへ

静かな退職を、「別に問題ない」とする考え方も確かにあります。
けれどせっかく採用した人。その人の能力を活かすことが私たちの仕事です。

人は、関わる場から意味や手応えを得られたとき、本来の力を発揮します。
その力を引き出せずにいるとすれば、それは個人の問題ではなく、組織の機会損失ではないでしょうか。

「辞めない社員」ではなく、「関わり続けたいと思える社員」を増やすには、次の3つの“安心”が欠かせません。

  • 1.心理的安全性
    安心して話せる、失敗しても許容される。そんな空気がある職場。
  • 2.納得感のある評価と期待の共有
    がんばりどころがわかる。ちゃんと見てくれていると感じられる。
  • 3.キャリアの見通し
    「ここで働き続けたら、どんな自分になれるか」が描けること。

おわりに

「静かな退職」は、声に出されない分、気づくのが遅れがちです。
でも実際には、職場との関係が静かに終わっていくプロセスのひとつ。

だからこそ、何も言わなくなったときこそが、対話を始めるチャンスです。

キャリエールでは、「今いる社員を活かす」ことに真剣に取り組む経営者とともに、
“静かに離れていく声”にも耳を傾け、もう一度職場と人の関係性をつなぎ直すお手伝いをしています。

関わる意味を、取り戻す。
その一歩が、組織の未来を変えていくのだと思っています。

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